「敷地内にいかに建物を配置するか」によって庭のプランが決まってきます。昨今は敷地が狭い理由もあって、庭のことまで考えて建築のプランをするわけでなく、「家が建ちました。庭をつくります」という形が多いのです。
したがって、玄関のとり方などでも、アプローチが全く余裕のない設計であることがあります。敷地内での建物や庭の配置などの地割が大事です。それぞれ周囲の条件や環境が違いますので、それらのことを考慮して決定してください。
庭の部位
【主庭】
庭の主要部であり、応接室、客間、居間などに面してつくられることが多く、住み手の生活の延長と安らぎの場として利用するものです。主庭は、基本的には、自分の好みによって自由に楽しむようにしたら良いでしょう。
【前庭・アプローチ】
来客があった場合に、一番最初に接するのが前庭です。門から玄関までのアプローチとその周囲の植栽、添景物を含めて前庭と呼びます。植栽だけでなく、延べ段、敷石も庭の景色の重要な要素です。「歩く」という実用本位の庭で、言うなれば茶庭と同じ役割をいたします。
【中庭・坪庭】
建物内部に日照、通風の目的で空間をつくるのが中庭・坪庭です。ヨーロッパではスペインのパティオが有名で、実用と観賞を兼ねた中庭です。日本の場合は、より精神的な安らぎを求める場としてつくられる例が多いようです。
【裏庭・サービスヤード】
実生活において不可欠の部分です。勝手口まわりに、物置、ゴミ箱、物干し場、自転車置き場など毎日の生活に必要な、雑多な目的を持つ多目的な空間として使われます。
【側庭】
主庭と裏庭をつなぐ役目をするのが側庭です。
庭木を植える前に
庭のプランを決め、植えつけをしますが、その前に必要なのは、その敷地の「土質」を調べることです。庭木にはそれぞれ植生があり、草花が育つに適した土壌というものがあります。全く庭木に合わない土質の場合には、土を入れ換えたりして、植えられるようにします。高木を植える場合は、その根が張れるだけの深さが必要です。
次に「日照」「通風」です。植物が育つのに十分な日差しが得られるかどうかは、植物にとって重要な問題であるというのは説明するまでもないでしょう。また、通風というのは防虫の意味からも大切です。最初から木を多く植えると、数年してから繁茂して通風が悪くなります。多少さびしいかな、と思われる程度に植えておく方がよいでしょう。
どのような庭木を植えるかということは、近所を参考にすればよろしいのです。隣家がどんな木を植えているか、また、近くの林にはどのような木が生えているかを見た上で、同じ種類の木を使えば、その土地に適しているのですから安心です。
主庭の役割
庭の設計に際しては、次の事項を検討します。
【主木、中木、下木】
庭木は、使う目的によって、また、木本来の性格から、主木、中木、下木と区別されます。庭のどの部分に、どのような木を、どのような形で使うか、が庭を形づくっていく上で決められていきます。
庭の中心となる木を主木といいます。全体のポイントになって、庭をしめます。
マツ、マキ、スギ、ヤマモモ、ツゲなどがそれにあたります。
中木は庭を構成する役目を持ちます。植木の大部分がこの中木にあたります。モチ、サザンカ、コナラ、コブシ、ツバキ、サクラなどがこの範疇に入ります。
下木は、主木、中木を引き立たせる役目をし、潅木のほとんどが下木となります。ミズキ、ユキヤナギ、レンギョウ、ツツジ類、ヒイラギナンテン、ヒサカキ、サツキ、アセビなどが入ります。
【陰樹と陽樹】
庭木には日陰、半日陰を好む陰樹と日当たりを好む陽樹とがあります。それぞれ建物と庭の取りようで、一日のうちどれくらい日が差すかを考慮した上で、使用する木を決めた方がよいでしょう。
【植える際の注意】
基本的に三年くらいの生長を考えて植えていきます。つくった当初の見栄えばかり追っていくと、三年後には混み過ぎてしまうということになります。風通しが悪く、病害虫の発生原因ともなり、管理上とても面倒になります。また、生長の度合いの異なる木があるので、将来の高さも考えに入れないと、現在の高い木と低い木とが逆になって、感じが違ってしまうことになります。
庭木の管理
庭木は、どんなにていねいに植えつけても、その後の管理が不十分だと、美観を損ね、病害虫の発生を招き、最後には枯れてしまいます。
【施肥】
肥料は与える時期によって、寒肥、お礼肥、芽出し肥とあり、油粕、骨粉、鶏糞、配合肥料、堆肥などが使われます。根に直接触れないような与え方をしてください。
【防寒】
寒さに備えワラやコモで幹巻きをします。低木類はワラ囲いをして雪の害から守ってやります。雪吊りやワラボッチなどは、実用の面のみならず、冬の風情として味わいがあります。
【消毒】
庭木が健康に育つためには、数多くの害虫から守ってやらねばなりません。害虫は葉、茎、根を食べたり、樹液を吸ったりして生きていきます。